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Lenovo ThinkCentre M75q Tiny Gen2 を買ってメモリとストレージを交換してみた

とある事情から Windows 11 の動作検証をするためのマシンが欲しくなった。 また、検証したい機能は仮想化に関係するので物理的なマシンがあった方が便利そう。 ついでに、我が家には 10 年以上前に購入したミニタワーのデスクトップマシンが残っていたのでリプレースすることにした。

マシンをリプレースする上での要件は次のように定めた。

  • OS として Windows 11 Pro が利用できる
  • 筐体のフットプリントがなるべく小さい
  • なるべくコストパフォーマンスに優れる
  • ゲームや GPGPU での利用は想定しない (NVIDIA GPU は必要ない)

当初は上記に合致するマシンとして、中国の新興メーカー (Minisforum など) が出しているミニ PC を検討していた。 最近は手のひらサイズでスペックの高いマシンが、ちょっと信じられないような価格で購入できるようだ。

ただ、スペック以外の面を考えると Lenovo の ThinkCentre シリーズの方が自分の好みに合致していると思うに至った。 スペック以外というのは、たとえばメーカーのサポートや信頼性などが挙げられる。

今回は、購入と作業に関する諸々の記録を残しておく。

Lenovo ThinkCentre M75q Tiny Gen2 について

購入した Lenovo ThinkCentre M75q Tiny Gen2 について紹介しておく。

まず、Lenovo ThinkCentre シリーズは筐体のサイズごとにいくつかのラインナップに分かれている。 その中でも、最も小さなものが今回購入したモデルの名前にも含まれる "Tiny" になる。 そして M75q Tiny Gen2 は、AMD Ryzen の CPU を搭載した、現時点 (2023-07) において最も安価な "Tiny" になる。 OS にこだわらず、最小構成で良ければ 5 万円台から手に入る。 さらに、一部の構成には標準で 3 年間のメーカー保証がついている。

www.lenovo.com

ただしデメリットもあって、搭載している CPU のアーキテクチャが Zen 3 なので、最新の Zen 4 に比べると一世代古い。 メーカーの Web サイト 1 を確認すると、発売日が 2021-06-01 なので 2 年前の CPU ということになる。 また、サポートしている PCIe のバージョンについても Gen3 なので、現在の主流である Gen4 に比べると遅くなる。 CPU の世代が新しい別のモデルは、もう少し価格が上がるので、ここは値段とのトレードオフになりそう。 とはいえ今回は、ベンチマークの結果なども考慮しつつ、用途に対して実用に耐えうると判断して購入するに至った。

なお、メモリやストレージについては、公式のカスタマイズを利用すると高くつく。 また、安価な即納モデルなどはそもそもカスタマイズできないものもあり、今回購入したのもそれに該当する。 とはいえ、Lenovo の ThinkCentre シリーズは基本的にユーザ自身でパーツを交換しやすい設計になっている場合が多い。 そして M75q Tiny Gen 2 もそうなので、メモリやストレージについては自分でカスタマイズするのが望ましい。

適合するメモリとストレージを選ぶ

本体の目星がついたら、自分でカスタマイズするために適合するメモリとストレージを選ぶ。

まず、メモリの規格は DDR4-3200 (PC4-25600) の SO-DIMM になる。 メモリスロットは 2 つあってデュアルチャンネルなので、パフォーマンスを考えるとモジュールを 2 枚挿すのが望ましい。 今回は Crucial 製 16GB のモジュールを 2 枚で 32GB にした。 なお、仕様上は最大で 64GB (32GBx2) のメモリまで対応している。

続いて、ストレージとしては PCIe Gen3 以上に対応している、フォームファクタが M.2 Type 2280 の NVMe SSD を選ぶ。 PCIe のバージョンに関しては、下位互換性があるので PCIe Gen4 のモデルを購入しても問題ない。 後述の理由から、できれば片面実装の製品が望ましい。 今回は WD_Black SN770 の 1TB モデルを選んだ。

下準備について

今回のようにストレージを交換すると、当然ながら OS が空っぽになるのでリカバリの作業が必要になる。 Lenovo は Lenovo USB Recovery Creator というリカバリ用の USB メモリを作るための Windows 向けツールを提供している。 そのため、あらかじめ容量が 32GB 以上の USB メモリを購入しておこう。

リカバリ用の USB メモリ (USB リカバリードライブ) を作成する手順は以下のページに記載されている。

pcsupport.lenovo.com

必要な手順は次のとおり。

  1. Lenovo サポートサイト 2 にアクセスしてアカウント (Lenovo ID) を作成する
  2. Lenovo リカバリーページ 3 にアクセスする
  3. 本体に記載されているシリアル番号を入力してリカバリーメディアを注文する
  4. Windows のパソコンで Lenovo USB Recovery Creator ツールをダウンロードする
  5. ダウンロードした Lenovo USB Recovery Creator ツールを実行する
  6. 手順 (1) で作成したアカウントをツール上で入力してサインインする
  7. 手順 (3) で注文したリカバリーメディアを選択して USB リカバリードライブを作成する

上記を実施して、あらかじめリカバリ用の USB メモリを作っておく。 Web には Windows のリカバリメディアを使う方法を試している人もいるけど、こちらの方が完全に製品出荷時の状態にできる。

購入したメモリとストレージに交換する

ここでは、簡単にパーツの交換方法について説明する。 なお、YouTube などを検索すれば同じ内容を動画で解説している人がいるので、そちらの方が分かりやすいかも。

まずは、先端がプラスまたはマイナスのドライバーを用意して、背面のネジを抜き取る。 抜き取ったら AMD のステッカーが貼ってある方のパネルをスライドさせて取り外す。

背面のプラスネジを抜き取ってパネルをスライドさせる

パネルを取り外すと、次のようにファンと 2.5 インチベイが露出する。

パネルを取り外すとファンと 2.5 インチベイが確認できる

筐体を裏返して、反対側のパネルもスライドさせて取り外す。

反対側のパネルもスライドさせて取り外す

すると、メモリと M.2 SSD のスロットにアクセスできる。

出荷時にインストールされているメモリと M.2 SSD

メモリと M.2 SSD を交換する。 まず、メモリはモジュールを固定している両側のラッチを広げて、上に持ち上げて斜めに引き抜く。 取り付けは、斜めに差し込んで上から力をかけるだけ。 そして M.2 SSD は、固定している青色のプラスチックを指などでつまんで引き抜いてから、上に持ち上げて斜めに引き抜く。 取り付けは、その逆をするだけ。

購入したメモリと M.2 SSD に交換したところ

ちなみに M.2 SSD は、取り外すとスペーサーを兼ねたサーマルパッドが確認できる。 両面実装の SSD を使うときは、このサーマルパッドが部品と干渉するため剥がす必要があるらしい。 購入した WD_Black SN770 は、少なくとも今のモデルは片面実装なので何もせずに設置できる。

パーツの交換が終わったら、最初にやった作業と逆の工程を実施して筐体のパネルを元の状態に戻す。

メモリの初期不良をチェックする

ここからはパーツを交換した後の作業になる。

これは念のために実施するオプション的な作業だけど、メモリに初期不良がないかチェックしておく。 ツールとして Memtest86+ などを使うと良い。

www.memtest.org

もし、この工程でエラーが見つかれば返品・交換の作業が必要になる。

ストレージをリカバリする

続いてストレージをリカバリする。

あらかじめ作っておいたリカバリ用の USB メモリを筐体のポートに差し込んで電源を入れる。 リカバリを実行する前に、ストレージのデータが消去される旨の警告が表示されるので了承する。 その後は自動で処理が進むので、完了するのをひたすら待つだけ。

なお、筐体には USB 2.0 のポートもあるので、誤ってそこに USB メモリを差さないように注意しよう。 具体的には、イーサネットポート (RJ-45) に近い 2 つの USB ポートが USB 2.0 なので、別のポートを使う。 差しても動作に支障はないけど USB 3.0 のポートを使う場合と比べてリカバリにかかる時間が伸びてしまう。

利用する

リカバリが完了したら、あとは Windows のセットアップを済ませて使うだけ。

交換した SSD のスループットを CrystalDiskMark8 で確認した結果は次のとおり。

CrystalDiskMark8を使ったベンチマーク

温度に関しては、アイドル時が大体 30 ~ 35 度くらい。 ベンチマークのソフトウェアを実行したときのピーク温度で 50 度いかないくらいだった。 リカバリ直後の状態で、特に余計なソフトウェアが入ることもなく快適に使える。