子どもが生まれると、必然的に動画を撮影する機会が増える。 今回は、子どもを撮影した動画を保存するために NAS (Network Attached Storage) を買ったら、副次的な効果として遠隔にいる両親に孫の動画を見せやすくなって良かったという話について。
TL; DR
- 最近の売ってる NAS は使いやすい
- 家の外からコンテンツを閲覧するのも簡単
- NAS の選び方について
背景
子どもが生まれる前後に、きっとこれから動画をたくさん撮るだろうと思ってビデオカメラを購入した。
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そして、ビデオカメラを購入すると、今度は撮影した動画を保存しておく場所として NAS がほしくなった。 なぜなら、撮影した動画を microSD カードのような外部記録媒体に入れたままだと、次のような問題点がある。
- 撮影した動画を鑑賞しにくい
- 外部記録媒体が故障するリスクは比較的高い
かといって、保存する先としてクラウドストレージを選ぶと、中長期的に見て月額が大きな出費になる。 同時に、最近の製品としての NAS というものを体験してみたい気持ちもあった *1 。
NAS の提供する機能
はじめに、NAS の提供する主だった機能について整理しておく。
ネットワークファイルシステム
これは、NAS の提供する最も基本的な機能のひとつ。 たとえば SMB (Server Message Block) や NFS (Network File System) といったプロトコルのサーバになる。 家の中でパソコンなどから、NAS のボリュームをネットワークごしにマウントしてファイルを操作する。
リモートアクセス
この機能も、最近の NAS では標準的に提供されている。 ようするに、家の外からでも NAS に保存したファイルにアクセスするための機能。
一昔前なら Dynamic DNS やルータの Destination NAT の設定など、自分で色々と頑張る必要があったけど今は昔。 今どきのものは、そういった手間が不要になっている。 たとえば専用のアプリや Web ページに、管理用 UI から自分で設定したアカウントを入力するだけで使えます、という感じ。
今回のいわば本題である遠隔地にいる両親にも、iPad にアプリを入れてもらってコンテンツを閲覧できるようにした。
ストレージの冗長化
ほとんどの NAS は、HDD (Hard Disk Drive) や SSD (Solid State Drive) といったストレージを複数搭載できる。 そのため、RAID (Redundant Arrays of Inexpensive Disks) を組むことでストレージの物理的な故障に対する冗長性を確保できる。 RAID の方式に関しては、とりあえずストレージが 2 本積めるものなら RAID1 さえ選んでおけば良い。
その他
その他にも、メーカーやモデルによっては NAS という枠にとらわれず多種多様な機能を提供している。 たとえば、アドオンで機能を追加することで仮想マシンや Docker コンテナが動いたりするようなものまである。 もはや、管理のしやすい Linux サーバという感じ。
NAS の選び方について
ここからは、NAS を買うために見るべきポイントについて書いていく。
スマホ・タブレット向けアプリの有無
今どきの NAS は、たいていリモートアクセスのできるスマホ・タブレット向けのアプリが用意されている。 ただし、以下の点については、あらかじめ確認しておいた方が良い。
- 自分が求めているユースケースに合致するか
- 使うまでに必要なステップが複雑でないか
ストレージに関して
NAS には、あらかじめストレージが内蔵されているものと、自分で買ってきて入れるものがある。 日本国内のメーカーが作っている製品や、ライトユーザー向けの製品ほどストレージを内蔵している傾向がある。 ストレージを内蔵しているモデルは手間がかからない一方で、ストレージの種類が自分で選べなかったり自分で同じモデルを買うよりも割高な傾向がある。
なお、ストレージには NAS で使うことを想定して作られた専用のシリーズがある。 専用のモデルは、一般的なモデルよりも信頼性が高かったり、ファームウェアにチューニングが施されている。 たとえば Western Digital であれば Red シリーズ、Seagate なら IronWolf シリーズがそれに当たる。
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国内テレビ・レコーダーとの連携
これが一番やっかいで分かりにくいポイント。 せっかく大きなストレージがあるならと、国内のテレビ・レコーダーで録画した番組を NAS に保存して再生したいというニーズはあるだろう。 そのためには、NAS が DLNA (Digital Living Network Alliance) の DTCP-IP (Digital Transmission Content Protection over Internet Protocol) という規格に対応している必要がある。 これは、著作権保護の機能が働いた状態でコンテンツをやり取りするための規格だけど、注意点が山盛りにある。 結論から先に述べると、このニーズを満たしたいときはあきらめて「テレビ・レコーダーに NAS の機能が付与されたもの」を買った方が良いと思われる。 例えば、次のようなもの。
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相性問題
DTCP-IP はサーバとクライアントの相性問題が強くある。 たとえば特定のレコーダーと NAS ではうまく記録できない、NAS に記録した内容を特定のアプリでは再生できない、というもの。 そのため、実際に使ってみたりレビューで確認できる環境でないと記録・再生できるかはわからないというレベルにある。
一度入れたら取り出せない?!
ほとんどの製品は、NAS に記録したら最後、別の製品には録画した番組を移動できない。 そのため、その NAS が故障したら記録した番組はあきらめる他ない、という状態になる。 テレビ・レコーダーに NAS の機能がついたものであれば、ブルーレイに焼くような選択肢もある。 また、一部の国内製品は同じシリーズ間でのみ番組を転送できるものがある。
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国外製品は基本的にアドオン機能で対応する
DTCP-IP は、基本的に日本国内の製品でのみ使われている規格となる。 そのため、国外の製品には基本的に標準では載っていないと考えた方が良い。 対応したい場合には、アドオン機能を使って有料のサードパーティ製のメディアサーバーの機能を追加することになる。
もちろん、機能を追加しても前述した問題は存在する。 また、対応しているのが特定の機種に限られるような場合もあって、なんというか地雷だらけ。 あきらめてテレビ・レコーダーを買った方が良い、という気持ちになる。
アドオン機能の有無
前述したとおり、国外の製品では特に、アドオン機能を使って機能を NAS に追加できるものが多い。 サードパーティーのメーカーがアドオンを配布するストアなども整備されていて、エコシステムが構築されている。 アドオンで追加できる機能が豊富にあると、NAS という用途に限らない使い方が楽しめる。
管理用 UI の使いやすさ
たいていの NAS は、管理用の Web UI で全て設定が完結する。 この点は自前のサーバマシンに Linux を入れてネットワークファイルシステムを構築するのとは比べ物にならないほど楽。 最近は台湾の NAS 専業メーカー (QNAP や Synology) が、この管理用 UI の分かりやすさという点で一歩リードしているようだ。
パフォーマンス
一般的なパソコンと比べると、お世辞にも NAS に積んである CPU やメモリのパフォーマンスは優れているとは言えない。 たとえば、エントリーグレードの CPU はシングルコアでメモリは 512MB とかになっている。 意外とここらへんは実際に使っているときのパフォーマンスに影響してくる。 基本的に上位のグレードを使うほどスループットなどのパフォーマンスに悩まされることは少ないと考えて良い。
主要メーカーと特徴など
Synology
- 台湾の NAS 専業メーカー
- 主な製品はストレージ非内蔵タイプ
- DTCP-IP に対応するときはアドオン機能で対応する
- あまり期待しない方が良い
- DiXiM Media Server が使えるのは DS218j だけ
QNAP
- 台湾の NAS 専業メーカー
- 主な製品はストレージ非内蔵タイプ
- DTCP-IP に対応するときはアドオン機能で対応する
- あまり期待しない方が良い
NETGEAR
- ネットワーク機器を手広く手掛けるアメリカのメーカー
- 主な製品はストレージ非内蔵タイプ
- DTCP-IP には対応していない
I-O DATA
- IT 機器を手広く手掛ける国内メーカー
- 主な製品はストレージ内蔵タイプ
- DTCP-IP には標準で対応しているモデルがある
バッファロー
- IT 機器を手広く手掛ける国内メーカー
- 主な製品はストレージ内蔵タイプ
- DTCP-IP には標準で対応しているモデルがある
(メーカーではないけど) テレビ・レコーダーに NAS 機能がついたもの (Panasonic ほか)
- 基本的にストレージ内蔵タイプ
- DTCP-IP 対応を重視するならこれ
購入した NAS について
我が家では Synology の DS218+ という製品を購入した。 なお、DTCP-IP については、前述したとおり対応できても中途半端なのであきらめている。
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Synology の NAS では、リモートアクセスに QuickConnect という機能が用意されている。 これは、専用のアプリ (DS File や DS Video など) や Web ページから NAS にアクセスできるというもの。 もちろん、ルータなどに特に設定をしなくても NAT 越えできる。 設定も NAS の管理用 Web UI で接続に使う識別子を確保して、あとはユーザのアカウントを用意するだけで使える。
この製品はストレージが非内蔵タイプとなっている。 うちでは Amazon のセールで購入した Western Digital の外付けハードディスクを殻割りして取り出した HDD を使っている。 この HDD については以下を参照のこと。
まとめ
うちでは、両親の iPad にアプリを入れて、上記の環境に接続してもらっている。 NAS のアクセス状況を見ると、最近は毎日のように実家で孫の動画を楽しんでいるようだ。 両親いわく COVID-19 もあって物理的に会うことが難しいので余計に嬉しいとのことだった。
いじょう。
*1:以前は自宅のサーバに Linux を入れて運用していた