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子育てにかかる費用を公的データで調べる

一般的に、子どもを一人育てるのには 2,000 万円かかるとか言われている。 しかし、何も子どもが生まれた瞬間に 2,000 万円が必要になるわけではない。 もちろん、2,000 万円を均等に割った額が毎年かかるわけでもない。 そもそも、こういった数字はあくまで代表的な家庭における目安に過ぎないはず。 たとえば、子どもがどういった就学をするのかだったり、世帯収入にも依存していると考えられる。 そこで、今回は子育てにかかる費用に対する自分の解像度を上げるために、公的な統計資料を当たってみることにした。

もくじ

インターネットによる子育て費用に関する調査

まず、第1子が誕生してから中学校を卒業するまでの費用に関しては、平成21年度に内閣府が実施した調査が参考になる。 この資料は教育費に限らず、子育てにかかる全般的な費用について扱っている。

www8.cao.go.jp

上記資料の「第3章 調査結果」に掲載されているグラフを以下に引用する。 このグラフからは、それぞれの就学区分ごとに第1子の子育てをするのに年間でいくらかかっているか分かる。

出典: 平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査 全体版 第3章 調査結果 42 ページ 図表 1-1.第1子一人当たりの年間子育て費用額(対象者全体平均)【第1子の就学区分別】

未就園児は 84 万円、保育園・幼稚園児は 121 万円、小学生は 115 万円、中学生は 155 万円が平均で必要となるようだ。 なお、この資料では就学先が私立か国公立かを区別していない。 つまり、調査対象とした全体の平均である点に留意が必要となる。

また、上記のグラフが掲載されている次のページには、各年齢ごとに分解したグラフが掲載されている。 グラフからは、年齢が上がる毎に学校外教育費 (塾や習い事) がじわじわと増加していく様子や、学校教育費が中学校から一気に増加する様子が伺える。

世帯年収ごとの子育て費用額の比較も興味深い。 以下は「保育所・幼稚園児」について、世帯年収ごとの年間子育て費用額を比較したグラフになっている。 このグラフからは、子どもが小さいうちは世帯年収ごとの子育て費用額の差は「子どものための預貯金・保険」や「レジャー・旅行費」に大きく出ることが伺える。

出典: 平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査 全体版 【参考資料】 37ページ 図表 4-3.世帯年収別にみた「保育所・幼稚園児」第1子一人当たりの年間子育て費用額(対象者全体平均)

一方で、以下は「中学生」について、世帯年収ごとの年間子育て費用額を比較したグラフになっている。 こちらのグラフでは、特に高い世帯年収において、子育て費用額の差が「学校教育費」や「学校外活動費」に大きく出ている。 つまり、子どもの年齢によって資金の余裕が振り分けられる先が少し変わるようだ。 これらも、自分たちの世帯年収に合わせて考える上で参考になるだろう。

出典: 平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査 全体版 【参考資料】 38ページ 図表 4-5.世帯年収別にみた「中学生」第1子一人当たりの年間子育て費用額(対象者全体平均)

ちなみに、「【参考資料】」に掲載されているグラフには子育てにかかる費用の構造が図示されており、こちらも面白い。

出典: 平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査 全体版 【参考資料】110 ページ掲載図表

子供の学習費調査

高校までの学習費に焦点を絞った資料としては、文部科学省が平成30年度に実施した調査が参考になる。 この資料では幼稚園から高校までの学習費を、国公立と私立で区別して調査している。

www.mext.go.jp

上記資料の「調査の結果 > 結果の概要 > 平成30年度 > 2.調査結果の概要」に掲載されているグラフを以下に引用する。

出典: 平成30年度 子供の学習費調査 2.調査結果の概要 図1−2 学校種別にみた学習費総額

上記から、国公立と私立で学習費に大きな差が生じることが確認できる。 私立中学の場合は公立の約 3 倍、私立高校でも公立の約 2 倍かかる。 場合によっては私立中学に進学を希望することもあるだろうし、私立高校であればより現実的な可能性として捉えておく必要がありそうだ。

教育費に関する調査結果

先ほどの文科省の調査は高校までが範囲だった。 高専・専修学校や大学など、高校以降の教育費については日本政策金融公庫の調査が詳しい。 この調査では「教育費負担の実態調査結果」を毎年公表している。

www.jfc.go.jp

上記で令和 3 年度の調査結果として掲載されているグラフを以下に引用する。 このグラフには、進学先別の年間の在学費用が載っている。

令和3年度 教育費負担の実態調査結果 6ページ 図−3 在学先別にみた1年間の在学費用(子供1人当たりの費用)

上記から、高専・専修学校や大学などへ進学すると、最低でも 100 万円程度は年間でかかることがわかる。 なお、上記は大学の費用を国公立と私立で区別していない。

大学に関して、国公立と私立の文理で区別したグラフが以下になる。

出典: 令和3年度 教育費負担の実態調査結果 6ページ 図−4 国公立・私立別にみた大学の在学費用(子供1人当たりの費用)

大学の中でも、国公立と私立の文理で費用の差が激しい。 国公立は平均で 103 万円だが、私立の文系は 152 万円、理系では 183 万円となっている。 なお、最近だと理系は大学院への進学が一般的になってきている点も心に留めておく必要がありそうだ。

また、上記の資料には自宅外通学に関する資料も載っている。 私自身は関東圏に居住していることもあってさほど可能性は高くないものの、それ以外の場合には参考になりそうだ。 とはいえ、関東圏に住んでいる場合であっても、海外へ留学する可能性は考慮する必要があるのだろうか・・・?

国民生活白書

最初に登場した「インターネットによる子育て費用に関する調査」は、子育てにかかる費用を広範に扱った調査だったが、対象は第1子に限定されていた。 では、第2子以降にかかる費用はどうなるのだろうか。 この点に関しては、内閣府が平成17年度に実施した国民生活白書の調査が参考になりそうだった。

warp.da.ndl.go.jp

平成17年版「子育て世代の意識と生活」の「第3章 子育てにかかる費用と時間 > 二人目・三人目の子どもにかける費用は逓減」に記述がある。

warp.da.ndl.go.jp

ここまで、一人の子どもを育てるための費用を見てきたが、更に子どもを育てた場合に子育て費用はどれくらい増加するのだろうか。一人の場合と同様に、「基本的経費」、「教育費」、「住宅関係費」に分けて、子どもを二人持つ世帯の「子どもを育てる費用」から子どもを一人持つ世帯の「子どもを育てる費用」を差し引いて、22年間分を足したものを「二人目の子ども9を育てる」費用として推計した。ここでいう「子どもを育てる費用」は、前項と同じく、付注3−1−1に掲げた費目における子どもを育てるための追加的な費用である。 その結果、一人の子どもを育てる費用の1,302万円に対して、二人目の子どもを育てる費用10は1,052万円と、20%程度節約されていることが分かった(第3−1−14図)。内訳ごとに節約の程度を見ると、二人目の基本的経費は一人目の80.0%、教育費は83.6%、住宅関係費は63.0%となっている。同様に三人目の子どもにかかる費用を推計すると、22年間で769万円となり、二人目と比べて更に27%程度節約されており、子どもの増加にともない、子どもにかかる費用は逓減していくことがうかがわれる。

上記より、第2子の子育てにかかる費用は第1子の約 8 割まで減少 (節約) し、第3子に至っては第1子の約 6 割まで減少することがわかる。 もし、すでに第1子がいる場合には、その実績を元に第2子以降でどれくらいかかりそうかを計算する上で目安にできそうだ。 ただし、この結果は単純に「減っている」のではなく、諸々の事情から「減らしている」ことも考慮する必要があるだろう。

いじょう。

まとめ

子育てにかかる費用が分からなかったので、公的データを調べてわかったことについて自分用にまとめた。