CUBE SUGAR CONTAINER

技術系のこと書きます。

加湿器を買ってみて分かったこと

今回は久しぶりに純粋な技術系ではないネタについて書いてみる。

最近、家に加湿器 (より正確には加湿空気清浄機) を導入してみた。 そこで、購入にあたって調べたことや、実際に使ってみて分かったことについて書き残しておく。

背景

我が家では、去年の春先から Awair という製品を導入して、家の中の空気の状態をモニターしている。

Awair 空気品質モニタ― 計測器 温度 湿度 ワイヤレス

Awair 空気品質モニタ― 計測器 温度 湿度 ワイヤレス

この製品は、設置した場所の温度・湿度・二酸化炭素濃度・化学物質の量・ほこりの量を時系列で確認できる。 記録される数値を眺めているだけでも意外と楽しい。

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そうした状況で、はじめての冬を迎えてからというもの、湿度のスコアは定常的に悪い状態を示し続けていた。 なぜなら、我が家には加湿器がないので、空気中の湿度は外気の影響を受けやすい。

そこで、なんやかんやあって Amazon で安くなっていた以下の加湿空気清浄機を導入した。

今回は、上記を使ってみて分かったことや、加湿器について調べたことを書いてみる。

使ってみて分かったこと

ひとまず、使ってみた上で購入するときに検討すべきと感じたポイントについて書いていく。

加湿能力

加湿器には、製品仕様として加湿能力が記載されている場合がある。 一般的に、これは 1 時間あたりどれだけの水を液体から水蒸気に相転移できるか (ml/h) で示される。

加湿能力が高ければ、それだけ広い空間 (部屋) を加湿できる。 加湿する能力に対して空間が広すぎると、適切なレベルまで湿度を高められない恐れがある。 あるいは、後述する通りタンクの水を頻繁に補充する必要に迫られる恐れもある。

タンクの容量

一般的な加湿器は、製品のタンクに入った液体の水を水蒸気にすることで加湿する。 もちろん、水蒸気にした分の水はタンクから減っていく。 タンクの水がなくなると加湿できないので、何らかの方法で補充しなければならない。 このとき、タンクが水道と直結でもしていない限り、人間がタンクを取り外して水を注ぐことになる。 意外と、この作業は面倒くさい。 しかも、環境によっては一日に何回も補充することになる。

そのため、購入する前にはタンクの容量を確認するのが望ましい。 前述した加湿能力をタンクの容量で割ることで、補充が必要な頻度がわかる。 ただし、加湿量を自動で調整する製品については、環境に依存するため単純な計算は難しい。 とはいえ、最大の加湿能力とタンクの容量さえ把握していれば、最短の補充間隔は少なくとも計算できる。

加湿量を調整する機能

ある程度のお値段がする製品には、湿度センサーが内蔵されている場合が多い。 そして、そのときの湿度に応じて、加湿量を調整してくれる。 ただし、後述する通り加湿量に応じて作動音が変化する場合がある点には注意が必要となる。

自動で加湿量を調整する機能がついていない製品では、単純に一定量を加湿し続けることになる。 その場合は、人間が目を光らせていないと、湿度が上がりすぎる恐れがある。 湿度が上がりすぎるとカビやダニの発生につながると言われている。

加湿時の作動音

一般的に、加湿器が作動するときには音が生じる。 大抵の場合、音の大きさは製品仕様に記載されているので確認した方が良い。 置く場所が寝室であれば、睡眠の妨げになる恐れがあるため特に重要となる。 作動音が大きいものであれば、就寝中に加湿量を意図的に減らす必要に迫られるかもしれない。 特に、今回購入した製品が採用している加湿方式 (気化) では、加湿量が増えるほど作動音も大きくなる傾向にある。

換気と湿度

加湿器を購入してはじめて分かったのが、想定よりも家の中の空気が外気と頻繁に入れ替わっているという点だった。 最近のマンションであれば、室内に 24 時間動作の換気装置がついている場合も多い。 つまり、室内を加湿していても湿気を帯びた空気はどんどん外気と入れ替わってしまう。 これは、なんだかマッチポンプをしているような気分だ。

では、それがもったいないということで換気装置を止めてみるのはどうだろうか。 実験的に換気装置を止めてみたときのグラフを以下に示す。

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今度は二酸化炭素濃度が急上昇している。 普段は人が二人いても 1,000ppm 前後で頭打ちになるところが 1,700ppm まで上昇している。 その後、減少に転じているのはあきらめて換気装置を作動させたため。

調べたこと

続いては、購入する前に調べていたことについて書いていく。

加湿器の微生物汚染について

加湿器病という言葉がある。 これは、加湿器のタンクの水や水蒸気に変わるまでの経路上で微生物が繁殖することで引き起こされるアレルギー性の疾患に対する俗称を指している。 詳しくは後述するものの、加湿器の方式によって発生するリスクが異なる。

方式 加湿器病のリスク
加熱方式 極めて低い
気化方式 相対的に低い
超音波方式 相対的に高い

適切にメンテナンスすることでリスクは下げられるものの、気になるときは考慮に入れた方が良い。

加湿器の方式について

加湿器と一口に言っても、その方式が色々ある。 そして、それぞれにメリットとデメリットがある。 購入する製品を選定する上で、その点がまず気になった。

以下に、代表的な 3 つの方式を示す。

  • 加熱 (蒸気、スチーム) 方式
  • 気化方式
  • 超音波方式

さらに、上記を組み合わせたものとしてハイブリッド方式というものがある。 組み合わせるのは、それぞれ単独の方式で存在するデメリットを緩和するため。

ちなみに、空気清浄機と一体型になっているものは気化方式が多い。 今回購入した加湿空気清浄機も気化方式になっている。

加熱 (蒸気、スチーム) 方式

加熱方式では、お湯を沸かしたときの蒸気で加湿する。 これはつまり、ストーブの上にやかんを乗せておくのと同じこと。 水蒸気になる水は煮沸消毒されるので、前述した加湿器病が原理的に極めて起こりにくい。 反面、電気代が高いというデメリットがある。

  • メリット
    • 加湿器病のリスクが極めて低くメンテナンスフリー
      • ただし、水アカが気になる場合にはクエン酸などで除去する必要あり
  • デメリット
    • 電気代が高い
気化方式

気化方式では、風を使って水を蒸発させる。 これは、濡れた洗濯物に扇風機を当てて乾かしているイメージ。 液体の水が水蒸気に相転移するとき気化熱が奪われるため、出てくる湿気を帯びた空気の温度は室温よりも低くなる。

  • メリット
    • 加湿器病のリスクは相対的に低い
      • ただし、高濃度の汚染を受けた場合にはその限りではない
    • 電気代が安い
  • デメリット
    • 加湿量に応じて作動音が大きくなりやすい
    • 出てくる風が室温より冷たい
超音波方式

超音波方式は、微細な振動で液体の水をエアロゾルにする。 加湿器から出てくる時点では細かい霧状の水なので、水蒸気になっているわけではない。 そのため、周囲の床が濡れたり、あるいはタンクの水が汚染を受けるとダイレクトに影響が出る。

  • メリット
    • 電気代が安い
  • デメリット
    • 加湿器病のリスクが相対的に高い
      • リスクを下げるためには定期的なメンテナンスを必要とする
    • 周囲の床が濡れる
ハイブリッド方式

上記の方式を二つ以上組み合わせて欠点を補ったものをハイブリッド方式という。 例えば「加熱 + 超音波」や「加熱 + 気化」がある。

加熱 + 超音波 (加熱超音波方式)

加熱超音波方式は、沸騰するまでいかない程度に加熱した水を超音波でエアロゾルにする。 超音波方式単独に比べると、加湿器病のリスクの低減や、加湿能力の強化、周囲の床が濡れにくくなるといった効果が得られる。 電気代は超音波方式単独に比べると高いものの、純粋な加熱方式よりは抑えられる。

加熱 + 気化 (温風気化方式)

温風気化方式は、濡れた洗濯物に乾燥機を当てて乾かしているイメージ。 気化方式単独に比べると、加湿能力を強化したり、気化熱で奪われる熱を補充できる。 電気代は気化方式単独に比べると高いものの、純粋な加熱方式よりは抑えられる。

湿度について

湿度には、絶対湿度と相対湿度がある。 絶対湿度は、単位あたりの空気が水蒸気として保持している水の量を表す。 相対湿度は、単位あたりの空気が水蒸気として保持できる水の最大量 (飽和水蒸気量) に対する割合を表す。

一般的に、ただ湿度といったときは相対湿度を指していることが多い。 飽和水蒸気量は気温によって変化するため、気温が変化すると絶対湿度は一定でも相対湿度は変化する。

例えば、次のように気温が上がると...

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反対に (相対) 湿度は下がる。

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湿度と病理の関係性について

ところで、なんとなく湿度が低いと健康に悪いような気がするものの、それは本当なのだろうか。 疑問に思って、軽く論文を探してみた。

インフルエンザの予防にはならないかもしれないけど、まあ線毛運動の機能が低下するのを防ぐことは気休めとしてできるかもしれない。

いじょう。

参考

  • 気化式加湿器の微生物汚染に関する実験的研究
    • 一般的に加湿器病のリスクが低いとされている気化式であっても高濃度の汚染を受けるとその限りではない、という研究結果が得られている
    • また、気化式といってもさらにいくつかの方式に別れており、それぞれリスクが異なっている