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技術系のこと書きます。

統計: 条件付き確率をベン図で理解する

条件付き確率というのは、具体的には次のような式で表される。

 P(B | A) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}

これは、ある事象  A が起こる条件の下で事象  B が発生する確率を求める式になっている。 とはいえ、これを見ていても一体どんな状況なのかさっぱり分からなかった。 具体的には  A B が同時に起こる確率  P(A \cap B) と何が違うのか理解できなかった。

ただ、ある問題をベン図と一緒に考えていたら、やっと分かるようになった。 今回は条件付き確率の自分なりの理解について書いておく。

問題

100 円玉 5 枚、10円玉 7 枚、1 円玉 3 枚の入った小銭入れから、同時に 3 枚の硬貨を取り出す。 いずれの硬貨を取り出すのも同様に確からしいとする。 取り出した 3 枚の金額の合計が 150 円以上であるという条件のもとで、その 3 枚の中に 1 円玉が含まれる条件付き確率はいくらか。

(統計検定 2 級公式問題集 2015 年 6 月問題、問 8 より)

上記の問題をベン図で考えると、次のようになる。

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上記のベン図に「組み合わせ」とあるように、この問題を解くには組み合わせの公式が必要になる。 具体的には、高校の数学 A の範囲で習うコレ。

 {}_n \mathrm{ C }_r = \frac{n!}{r! (n - r)!}

全ての組み合わせ

まず始めに、全ての組み合わせが何通りあるかを考えよう。

コインは全部で 15 枚あって、そこから 3 枚を取り出すことを考えれば良い。

 {}_{15} \mathrm{ C }_{3} = \frac{15!}{3!(15 - 3)!} = \frac{15 \times 14 \times 13}{3 \times 2} = \frac{2730}{6} = 455

上記から、全ての組み合わせは 455 通りあることが分かった。 つまり、各個別の組み合わせは  \frac{1}{455} の確率で発生する。

150 円以上になる組み合わせ

次に、合計が 150 円以上になる組み合わせについて考える。 これは、先ほどのベン図でいうと赤い集合に相当する。

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3 枚のコインで 150 円以上にするには、最低でも 100 円玉が 2 枚以上ないといけない。

100 円玉が 3 枚になる組み合わせ

まずは 3 枚のコインが全て 100 円玉だったときのパターンから。

これはつまり、5 枚あるコインの中から 3 枚を取り出すときの組み合わせを考えれば良い。

 {}_5 \mathrm{ C }_{3} = \frac{5!}{3!(5 - 3)!} = \frac{5 \times 4 \times 3}{3 \times 2} = \frac{60}{6} = 10

このパターンは 10 通りあることが分かった。

100 円玉が 2 枚になる組み合わせ

次に 3 枚のコインのうち 2 枚が 100 円玉で、残りの 1 枚がそれ以外のパターン。 これは、5 枚あるコインの中から 2 枚を取り出す組み合わせと、それ以外の 10 枚から 1 枚を取り出す組み合わせの積になる。

 {}_5 \mathrm{ C}_{2} \times {}_{10} \mathrm{ C }_1 = \frac{5!}{2!(5 - 2)!} \times \frac{10!}{1!(10 - 1)!} = \frac{5 \times 4}{2} \times \frac{10}{1} = 10 \times 10 = 100

このパターンは 100 通りあることが分かった。

確率を計算する

上記から 150 円以上になる組み合わせは 2 つのパターンを合計して 110 通りあることが分かった。

確率は、150 円以上になる組み合わせと全ての組み合わせの比率になる。 つまり、後ほど前提条件となる確率  P(A) はこう。

 P(A) = \frac{110}{455} = \frac{22}{91}

150 円以上で 1 円玉が含まれる組み合わせ

次に 150 円以上で、なおかつその中に 1 円玉が含まれる組み合わせを考えてみよう。 事象  A が 150 円以上だとすると 1 円玉が含まれるのが事象  B になる。 両者をどちらも満たす状況というのは  A \cap B だ。

前述した通り 150 円以上とするには、必ず 100 円玉が 2 枚以上は必要となる。 そして、その中に 1 円玉が含まれるという状況は 100 円玉が 2 枚で 1 円玉が 1 枚のときだけ。

これはつまり 5 枚の 100 円玉から 2 枚を取り出す組み合わせと、3 枚の 1 円玉から 1 枚を取り出す組み合わせの積になる。

 {}_5 \mathrm{ C}_{2} \times {}_{3} \mathrm{ C }_1 = \frac{5!}{2!(5 - 2)!} \times \frac{3!}{1!(3 - 1)!} = 10 \times 3 = 30

上記から、これは 30 通りあることが分かった。

つまり、上記の条件は確率でいうと次のようになる。

 P(A \cap B ) = \frac{30}{455} = \frac{6}{91}

条件付き確率

さて、これで条件付き確率を計算するのに必要なものは揃った。

条件付き確率の式に値を代入してみよう。

 P(B | A) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)} = \frac{ \frac{6}{91} }{ \frac{22}{91} } = \frac{6}{91} \times \frac{91}{22} = \frac{6}{22}

結果は  \frac{6}{22} となった。 つまり、最初に出てきた問題の答えは  \frac{6}{22} ということになる。

計算の意味

とはいえ、肝心なのは上記の計算に一体どんな意味があるかだと思う。

もう一度、最初に示したベン図を見てもらいたい。

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先ほどの条件付き確率の式と一緒に見ると、赤い集合と小豆色の集合の比率を計算していることが分かる。

 P(B | A) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}

条件付き確率とは

つまり、条件付き確率というのは、事象  A が前提条件となるため  P(A) を分母とした確率になる。 その状況下で、さらに事象  B が起こるということは、両事象が一緒に起こる確率  P(A \cap B) が分子になる。 これで、事象  A が起こってから事象  B が起こる確率が計算できるというわけらしい。

先ほどの問題を例にして説明しよう。 コインを 3 枚取り出したときに合計が 150 円以上だったという事象  A は、既に起こっているとする。 既に起こっているとした上で、取り出したコインの中に 1 円玉が含まれる確率が知りたい。 これの計算が、条件付き確率の意味だった。

以上、ベン図と一緒に式を見ると「フーンなるほど」とならない…かな?